介護採用の成功事例に学ぶ人材確保の取り組みと離職を防ぐ具体策

「求人を出しても応募がゼロ、採用しても離職が続く……」
採用担当として、この状況に頭を悩ませていませんか。実は、厳しい環境でも確実に人を集める介護士の採用における成功事例には、共通の仕組みと戦略があります。
本記事では、医療現場の知見を持ち、経営の伴走者として活動するKoeLが、最新トレンドや具体的な改善策を提示します。現状の課題を可視化し、選ばれる施設になるための方法を知りましょう。
介護採用の現状

介護業界の採用活動は年々厳しさを増しており、多くの施設が人手不足に頭を抱えています。
担い手が不足する構造的な問題や制度の変化など、現場を取り巻く環境は変化している状況です。
まずは、採用担当者として向き合うべき現在の立ち位置を、正しく把握していきましょう。
介護士の有効求人倍率
介護現場の求人倍率は他業種と比較して高く、売り手市場が続いています。高齢化の進展でサービス利用者が増える一方、若年層の減少などで働き手が全く追いついていない構造的な不一致があるからです。
厚生労働省の試算によると、2026年度だけで約240万人もの介護職員が必要になるとされています1)。現状の供給ペースではこの膨大な必要数に届かない見通しであり、一人の求職者を数多くの施設が奪い合う激しい競争が日常化しているのが現状です。この高い倍率を考慮して、選ばれるための戦略を練り直していきましょう。
需要が増え続けている
介護サービスへのニーズは、今後も右肩上がりで拡大し続け、職員不足の悩みは深まるばかりでしょう。日本の総人口が減少局面にある中で、65歳以上の高齢者人口だけが増加の一途を辿っているためです。
国立社会保障・人口問題研究所の将来推計人口によれば、2040年には高齢者人口が約3,929万人に達すると予測されています2)。実際に有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅などの民間施設の定員数も増加傾向にあり、現場が必要とする人の数はますます増大しています。需要の拡大に備えて、確実な採用ルートを確立することが急務だといえます。
給与格差がより明確に
近年の制度変更により、事業所間での給与水準の開きが以前よりも明確になっています。2024年に行われた「処遇改善加算の一本化(複数の加算を統合し整理した仕組み)」が、採用市場における競争力に大きな影響を与えているからです。
最上位の区分を算定できている施設と、そうでない施設の間で賃金格差が浮き彫りになり、求職者からもその差は一目瞭然となっています。処遇面で他所に劣る状況では、どれだけ求人広告を出しても応募が集まりにくいという厳しい現実に直面しかねません。
自社の立ち位置を冷静に分析し、給与以外の独自価値を磨く重要性がこれまで以上に高まっているでしょう。
介護採用がうまくいかない理由

採用が難航する根本的な原因は、業界に対する根強いネガティブなイメージと、職場情報の不透明さにあります。多くの求職者は個別の施設を比較する前に、「介護は心身ともにきつく、人間関係が閉鎖的ではないか」という不安を抱いていることが多いです。
実際に離職理由として「職場の人間関係」や「業務内容とのミスマッチ」を挙げる声は多く、現場の生々しい情報を求めている候補者は全体の約半数にのぼります。どれだけ求人広告を出しても、働く人の声や実際の雰囲気が伝わらなければ、心理的なハードルは下がらず、他業界へ人材が流れてしまうでしょう。
まずは求職者の目線に立ち、自社のリアルな情報を開示して不安を解消することから始めることを提案します。
介護採用のポイント

介護業界で円滑な採用をするには、単に広告を出すだけでは不十分です。求職者が自社と接触するあらゆる場面で「ここで働きたい」と思わせる工夫が大事になります。特別なコストをかけず、明日からでも改善できる具体的なポイントを3つに絞りました。
面接の印象を良くする
面接を一方的な選考の場ではなく、お互いの価値観をすり合わせる「対話の場」へと変えていきましょう。求職者は面接官の態度や質問内容から、職場のリスペクトや将来性を敏感に感じ取っているからです。
退職理由などのネガティブな確認に終始せず、入社後の成長イメージやケアへの想いを語り合うようにしてください。パンフレットを用意して歓迎の意を示したり、現場スタッフが施設を案内したりする細やかな配慮も、志望度を高めます。対等な立場での傾聴を意識し、相手が「大切にされている」と感じる時間を提供しましょう。
挨拶など基本的なことをしっかりと
採用担当者だけでなく、現場スタッフ全員で求職者を迎え入れる雰囲気作りを徹底してください。候補者は職員同士のやり取りや施設の清潔感を、職場の本音として非常に厳しくチェックしているためです。面接当日は朝礼などで情報を共有し、スタッフが笑顔で挨拶できる状態を整えておきましょう。
また、水回りや更衣室などの整理整頓が行き届いているかも大事です。挨拶がない、あるいは備品が散らかった現場では、人間関係や業務の質に不安を抱かせてしまいかねません。基本的なマナーを磨き直すことが、施設の信頼感を高める何よりの土台となりますよ。
対応速度を早くする
採用活動において、レスポンスの速さは熱意と信頼を示す手段だと心得ましょう。優秀な人材ほど複数の施設から声がかかっているため、連絡が遅れるだけで他所に流れてしまうリスクが非常に高いからです。
具体的には、面接日程の調整は1〜2日以内に行い、採否の結果も可能な限り面接当日か翌日には伝えるのが望ましいでしょう。連絡に3日以上かかってしまうと、求職者の意欲は急速に低下し、内定辞退につながりかねません。
採用できるチャンスを掴むために、施設内の意思決定プロセスを簡略化してでもスピード感を最優先してください。
介護採用の成功事例3つ

採用難の時代でも、知恵と工夫で確実な成果を上げている施設は存在します。
共通しているのは、求職者の不安を先回りして解消したり、自院ならではの価値を言語化して届けたりする姿勢です。
ここでは、実際に人材確保に繋がった3つの具体的なエピソードをご紹介します。あなたの施設のヒントにしてみてください。
出産後の退職をなくす工夫
経験豊富な職員がライフイベントで現場を離れてしまう損失を防ぐために、経済的な不安を解消する独自の制度が注目されています。子育て世代が直面する「働き方をセーブすると収入が下がる」という悩みを、組織がバックアップすることで解決できるからです。
例えば法人A様では、同じ職場で働く夫婦を対象に「夫婦応援制度」を導入しました。育休明けにどちらかが非常勤に転換して給与が減った際、年度末に最大30万円を支給して収入差を埋める仕組みです。
制度の目的を全職員に共有し、周囲の理解を得る努力も並行して行いました。その結果、育休後の退職者がゼロになっただけでなく、評判を聞きつけた新たな入職者が増えるという好循環に繋がっています。
施設の魅力を発信する
自社の理念を深く理解してくれる「共感層」にターゲットを絞り込むことが、ミスマッチのない採用につながります。単なる条件の提示ではなく、施設の想いやカラーに賛同する人を集めることで、定着率の高い組織作りが可能になるからです。
事業所B様では、新設拠点の立ち上げに際し「理念への共感」を軸とした情報発信を強化しました。ホームページや説明会で「自分たちらしさ」を丁寧に言語化し、候補者一人ひとりとじっくり対話する時間を設けたのです。
採用活動に慣れていない段階からのスタートでしたが、理念を重視する姿勢が響き、最終的に20名以上もの常勤介護職の獲得に至りました。条件面だけで競わず、自社の「らしさ」を前面に出して対話を重ねる姿勢が、良質な人材を引き寄せる力になるでしょう。
お仕事説明会を実施する
「会社の説明」ではなく「仕事そのものの内容」を伝える場を作ることで、求職者の心理的なハードルを劇的に下げられます。未経験者や潜在層にとって、会社の詳細よりも「具体的に何をするのか」が見える方が、応募の決断をしやすいからです。
実際に、地域へ配布するチラシで「お仕事説明会」の開催を告知した施設C様の事例をご紹介します。チラシには職員が働く様子の写真を掲載し、実際の仕事内容を分かりやすく紹介しました。
あえて「介護に興味を持ってもらう」程度の低い目標を設定したことで、1回で30名以上の応募を集め、15名の採用に結びつきました。1人あたりのコストは3万円台という安さでした。職場のリアルな姿を「仕事の紹介」として発信することが、幅広い層へのアピールとして機能したのです。
介護の採用を成功させよう

本記事では、介護採用の現状から成功事例までを解説しました。深刻な人手不足という構造的な課題はありますが、求職者の不安を先回りして解消する「情報開示」と「スピード感」を意識すれば、結果は大きく変わります。
まずは自施設の給与や待遇を客観的に分析し、現場の「リアルな魅力」を改めて整理することから始めてみてください。挨拶の徹底や迅速なレスポンスなど、今日からの取り組みが、理想の人材を引き寄せる第一歩になります。現場の声を大切にしながら、選ばれる施設作りを進めてください。
1)介護人材確保の現状について(第6回社会保障審議会福祉部会 福祉人材確保専門委員会 参考資料2).厚生労働省社会・援護局.2025. https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000203513_00008.html(参照2026-3-17)
2)「2040年に向けたサービス提供体制等のあり方」現状と課題・論点について(「2040年に向けたサービス提供体制等のあり方」検討会(第1回) 資料3).厚生労働省老健局.2025. https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-rouken_558712_00001.html(参照2026-3-17)
