介護人材を育成するための取り組み5選!注意点と事例を知って定着を促す方法

せっかく採用したスタッフがすぐに辞めてしまう。
施設管理者として頭の痛い問題ですよね。
「また一から指導し直さなければいけないのか…」
と、現場の負担増に不安を感じていませんか。
実は、慢性的な人材不足を解消するには、新規採用を焦るのではなく、今いるスタッフを定着させる『介護人材育成』が大事。
本記事では、経営者の右腕として想像を超える解決策を導き出す株式会社KoeLの視点から、明日から実践できる介護人材育成の具体的な取り組みや成功事例までを解説します。
介護や福祉業界の現状

介護現場での人材確保は年々厳しさを増しています。適切に人材確保をするには、まずは人材不足の現状や業界特有の背景を整理することが大切です。
直面している課題を正しく把握することが、自施設に合った解決策を見つける土台になるでしょう。
人材不足の実際
介護サービスを必要とする高齢者が急増する一方で、それを支える介護職員の確保が追いついていない状況です。
厚生労働省の”第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について”の推計データが裏付けとなるでしょう。 同資料では2026年度に約240万人の職員が必要とされ、2022年度(215万人)比で約25万人も上乗せしなければなりません1)。
現場の約65%がすでに人手不足を感じている現状もあり、早急な人材の確保と定着対策が求められています。
景気と逆行しやすい
介護業界の採用活動は、他の産業における景気の動向に強く左右されてしまうという特有の難しさがあります。
世の中の景気が上向くと求職者の多くが他業種へ流れてしまい、介護現場での採用難に拍車がかかってしまうからです。
厚生労働省”福祉・介護人材確保対策について”によると、採用率は他産業より高いものの、好景気時は人材獲得がむずかしくなると裏付けるデータがあります2)。
だからこそ、外部の景気に依存しない強い採用力を身につけ、求職者から選ばれる魅力的な職場づくりを進めていきましょう。
育成が大事になる背景
今後の介護施設においては、新規採用だけに頼るのではなく、今いる人材の定着を狙った『育成』への注力が必要不可欠です。
多額の採用コストをかけて新しい人を雇い入れても、早期離職が続いてしまえば現場の負担は一向に減らないからです。
厚生労働省”介護労働の現状について”では訪問介護の現場で8割以上が人手不足を訴えており3)、即戦力の維持は急務といえるでしょう。
職員のスキルを高め、やりがいを実感できる環境を整えることこそが、人材難を乗り切る確実な手段だと思っています。
介護人材を育成するメリット

介護人材を育成することは、職員の早期離職を防ぎ、施設全体のサービス品質を底上げすることにつながります。
明確な基準に基づいて指導を行うことで、業務の属人化やケアの手法の違いによるスタッフ間のトラブルが減らせるでしょう。
誰が対応しても同じ手順でケアできるようになれば、「あの職員じゃないとダメ」といった利用者からの不満も減らせます。
さらに、しっかりした教育体制を整えておくことは、採用活動時に求職者へ安心感を与える強いアピール材料になるのです。
育成の仕組みづくりは、今いるスタッフを守り、人材の定着をうながしながら、新たな人材を呼び込むための、施設にとって重要な取り組みになります。
介護人材を育成する取り組み5選

職員のスキルを伸ばし、長く働き続けてもらうためには、施設全体で計画的な教育体制を構築することが重要です。
ここでは、今日から現場に取り入れられる具体的な人材育成の取り組みを5つ紹介します。
メンター制度を導入する
新人や若手スタッフの精神的な支えとして、メンター制度の導入をおすすめします。
業務指導とは別に、悩みを気軽に相談できる相手がいることで、孤独感や不安を和らげることができるからです。
具体的には、直属の上司ではない、別部署の経験豊富な先輩をメンター(相談役)として配置するのがいいでしょう。
一対一で定期的に面談を行うことで、職場の人間関係やキャリアの悩みを率直に打ち明けやすくなります。
スタッフのメンタルヘルスを保ち、早期離職を防ぐためにも、ぜひ相談しやすい環境を整えてみてくださいね。
キャリアパス制度を整える
職員が将来の目標を持って働けるように、キャリアパス制度を明確にしておくことが大切です。
自分がどのように成長し、どんな評価を得られるのかが見えないと、モチベーションを維持するのが難しくなる傾向があるからですね。
たとえば、介護福祉士などの資格取得に向けた費用補助や、資格取得後の手当支給といったサポート体制を整備しましょう。
あわせて、国が推奨する『キャリア段位制度』を取り入れ、到達すべきスキルレベルを可視化するのも良い方法です。
頑張りが目に見える形で評価される仕組みを作ることで、スタッフは意欲的にスキルアップに取り組むようになります。
OJT研修をおこなう
現場の即戦力を育てるためには、実際の業務を通じて学ぶOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)体制の構築が欠かせません。OJTとは上司や先輩社員が実際の業務を通じて必要な知識やスキルを指導・育成する人材育成の手法です。
座学だけでは理解しきれない介助の細かいコツや利用者ごとの個別な対応は、現場で直接指導を受ける方がスムーズに習得できるでしょう。
教育担当となる先輩スタッフをあらかじめ決め、マンツーマンで指導にあたるようにします。
担当者を固定することで教え方にばらつきが出ず、施設内で統一された介護技術を伝えられます。
新人が安心して業務を覚えられるよう、計画的で丁寧なOJT研修を実施していくことは重要です。
社内と社外研修を実施
施設内の知識を常にアップデートし続けるために、社内と社外の両方で研修を実施することをおすすめします。
施設の中だけの教育にとどまると、最新の介護技術や他業界の優れたノウハウを取り入れる機会が失われてしまう懸念があるためです。
まずは外部の専門機関が主催する研修に一部の職員を参加させ、そこで得た新しい知見を社内研修で他のスタッフへ共有する仕組みを作りましょう。
こうすることで、時間や費用のコストを抑えながら事業所全体のサービスレベルを均一に引き上げることが可能となります。
視野を広く持ち、外部からの刺激を定期的に取り入れる学習環境を作っていきたいですね。
指導方法を工夫する
育成をスムーズに進めるには、教える側の指導方法そのものを工夫し、ブラッシュアップしていく視点が必要です。
どんなに優れた技術を持つベテランでも、相手に伝わる教え方ができなければ、新人の成長を遅らせてしまう場合があるためです。
「見て覚えなさい」といった属人的な指導を減らし、業務マニュアルを細かく作成して指導の基準を統一してみてくださいね。
同時に、教える側の職員に対しても指導者向けの研修を実施し、コミュニケーションの取り方や褒め方、フィードバックの技術を学んでもらうことも大切。
教える側のスキルを高めることが、結果として新人スタッフの早い独り立ちへと繋がっていくはずです。
介護人材育成の注意点

人材育成を行う際は、特定のスタッフに指導を丸投げせず、施設全体で統一した方針を持つことが不可欠です。
教える人によってケアの手順が違ったり、「見て覚えて」といった感覚的な指導が続いたりすると、新人は混乱して強い不信感を抱いてしまいます。
ミスを感情的に叱責したり、「私たちの若い頃は」と古い価値観を押し付けたりするのも避けましょう。
単に作業の手順を指示するのではなく、「なぜこの介助が必要なのか」という理由を丁寧に伝え、できている部分をしっかり評価することが大切です。
指導担当者ばかりに負担が偏らないよう、全員で新人を温かく見守る体制をつくっていきましょう。
介護人材育成に成功した実例

人材育成の課題を抱える施設は多くありますが、他施設の成功例を知ることで解決のヒントが得られます。
ここでは、明確な目標設定やメンタルケアの導入によって、職員の定着率を大きく改善した2つの事例を紹介しますね。
キャリアアップの計画を実施したA施設
職務の階級と昇格の条件を明確に定めたことで、職員の働く意欲が向上し離職率を大きく低下させています。
自分が次に目指すべき役割がはっきりとわかり、将来のキャリアプランを具体的に描きやすくなるからです。
A施設では、入職3~7年で『バイスリーダー』という役職に就ける仕組みを新たに作りました。 そこでは自分の業務だけでなく、レクリエーションの企画など多職種と連携する役割を担うことになります。
さらに上の『副主任』への道筋も示し、資格取得の助成金も用意して職員の学びをサポートしている事例です。
計画的なステップアップの道筋を提示する工夫が、スタッフのやりがいと成長をしっかりと引き出してくれるでしょう。
心理専門職による研修をおこなったB施設
新入職員に対するメンタル面のサポートを手厚くすることで、入社直後の早期離職を劇的に減らしています。
業務の技術を覚える前に、人間関係や現場特有のプレッシャーで心を病んでしまうケースが多いです。
B施設では、年齢の近い先輩が相談に乗るメンター制度を整えつつ、外部から公認心理師を招きました。
新人研修の中に『SOSの出し方』や『ストレスコントロール』を学ぶ講座を組み込んだのです。 結果として孤立する新人がいなくなり、職場全体でフォローし合う体制が自然と定着しました。
技術指導だけでなく精神的な安全を保障する取り組みが、人材を長く定着させる大きな要因となった事例です。
介護人材を育成して、人材定着を図ろう

今回は、介護人材を育成する具体的な取り組みと注意点について解説しました。
制度を整えることも大切ですが、それを運用する『人』の姿勢が何より重要です。
どんなに立派なメンター制度や研修を用意しても、管理職が現場の声に耳を傾けなければ形骸化してしまうからですね。
まずは日々の挨拶や、些細な声かけから始めてみてください。
スタッフが「自分の頑張りを見てくれている」と安心できる関係性が、すべての育成の土台になります。
日々の小さな信頼の積み重ねが、結果として教育制度を機能させ、長く定着する人材を育てるはずです。
焦らず、できるところから自施設の環境を見直していきましょう。
<参考先>
1) 第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について. 厚生労働省. https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_41379.html, (参照2026-9-30).
2) 介護人材確保の現状について. 厚生労働省. https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/001485589.pdf, (参照2026-9-30).
3) 令和5年度「介護労働実態調査」結果の概要について. 公益財団法人介護労働安定センター. https://www.kaigo-center.or.jp/content/files/report/2023_jittai_chousagaiyou.pdf, (参照2026-9-30).
